とうきょう総文2022 朗読部門のこと
(2023年3月発刊の岩手県高文連紀要に寄せた文章を,蔵出しでお送りします)
視聴覚委員のAFは,2022(令和4)年8月の全国高等学校総合文化祭(とうきょう総文)放送部門に出場し,朗読部門の特別賞に選ばれました。以下は,大会の発表のことをまとめたものです。
1. 岩手として取り組んだこと
1.1. 全国高総文祭放送部門の代表
全国高総文祭放送部門の代表は,前の年の県高校放送新人大会で選ばれます。各都道府県の推薦数は,アナウンス部門と朗読部門が3人ずつ,番組は,ビデオメッセージ部門が2校,オーディオメッセージ部門が1校です。代表が選ばれるのは11月,全国高総文祭は次の年の8月で,たっぷり半年以上準備できます。
1.2 とうきょう総文2022朗読部門には『注文の多い料理店』で
岩手県チームはこの長い期間を使って,県としてのまとまりのある発表を毎年つくってきました。朗読部門の規定は,「郷土にゆかりのある作品または作家,一人2分以内,です。今回の代表3人で選んだのは,宮沢賢治の『注文の多い料理店』,2分の朗読×3で,この物語を楽しんでもらう,ということです。
1.3 3人でたてた作戦
朗読には,耳で物語を理解するほかに,解釈を味わうという楽しみがあります。わたしたちは,聴いている方々が物語をざっくりと知っているという前提で,わたしたちなりの解釈の形,『注文の多い料理店』の楽しみ方を強調したいと思ってとうきょう総文の会場に向かいました。
一番手,盛岡一高のCMさんは,地の文の的確な表現が得意です。不気味な雰囲気の場面で注文「が」多い料理店へ誘いました。
二番手,盛岡白百合のSNさんは感情表現が大好きで,企みに気がついた二人が慌てふためく場面を読みました。
三番手のわたくし,盛岡二高のAFは,この二人を追い詰める場面にしました。ですからわたくしの入賞は,3人のリレー全体への評価です。
2. 自分が工夫したこと
2.1. 三つの役をどう区別するか
私が自分のパートで工夫したことは二つあります。ひとつは登場人物の読み分けです。
私が読むパートには猫が2匹と地の文,合わせて三役がでてきます。朗読では,誰が喋っているのか,どこが会話文でどこが地の文なのかがわかるようにしなければ話が伝わりません。この読み分けに特に重点を置きました。具体的には片方は声を高めにゆっくり噛み締めるように喋る猫,もう片方は声を低めに早口でぶっきらぼうに喋る猫,地の文はあまり感情をのせない淡白な声,というふうに工夫しました。
また,話の方向が区別できるように,マイクを軸にしてかみしもを切りました。立ちマイクだと,単に左右を向くのではなく,マイクの前の立ち位置を変えて声の向きを変えられます。このほか,自分の解釈で猫2匹をキャラクター化して絵を描いたりしました。
2.2. 宮沢賢治の言葉遊び
もうひとつは言葉遊びを目立たせることです。宮沢賢治の文章には,声に出して読んで初めて分かる音の工夫がたくさんあります。それをいかに面白く伝えるのかに力を入れました。巻舌を使ったり,わざとらしく溜めたりしてみました。そして3人で,「注文が多い 料理店」のイントネーションで「注文の多い 料理店」とコールしました。
2.3. 朗読で笑ってもらう
わたしには大会での目標がひとつありました。それは聴いている誰か一人でもいいから笑わせることです。発表直前も,そして発表時も私の頭を占めていた思いはただこれ一つでした。私はこの朗読をすると決めた時からずっと,図々しいながら自分の朗読に自信を持っていました。自分の朗読は,先生,委員会のみんな,特にも同じ視聴覚委員のYYさんが解釈と表現を一緒に考えてくれた集大成でした。だから発表の録画に審査員の伊藤文樹アナウンサーが大きくうなずきながらウケている様子があったとき,やった,と思いました。
自分の朗読は会場のウワサになりました。そして,審査員の得点の足し算で決まる優秀賞ではなく,全体をとおして特に印象深かった,誰かの「一推し」だった特別賞に選んでいただきました。自分の3年間や委員会みんなの活動が認められた気持ちで何より嬉しく,誇らしかったです。関わってくれた方々に感謝してもしきれません。ありがとうございます。